大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(う)143号 判決

被告人 福田悦久

〔抄 録〕

記録並びに原判決挙示にかかる被告人の原審公判廷における供述記載、司法警察員、検察官に対する各供述調書、横手すのの司法警察員に対する供述調書(昭和五一年一〇月二八日付)等関係証拠に当審における事実取調べの結果、特に鑑定人大須賀恒夫の鑑定の結果を総合すると、被告人は本件各犯行当時、自我障害、思考障害、幻覚、情意障害を主症状とする精神分裂病に罹患していて犯行に対する是非弁別能力並びに弁別に従って行動する能力を欠き、心神喪失の状態にあったものと認めるのが相当である。≪中略≫

尤も、被告人が被害者達らと応対した際の前記被告人の言動のうちには、自己の行為を認識し、一見被告人なりに理解可能な弁明をし、記憶に従いその旨捜査官に対し供述している。しかしながら、右被害者らに対する犯行当時の応対は前記(二)、(三)において説明した如く、実は単なる反射的、衝動的行動とみるべく、正常な思考経過を経た言動とは認められず、かかる応答を以て表面的に被告人の精神分裂病罹患の状態における精神能力を判断することは危険であり、また、被告人が犯行後自己の行動を記憶している点についても、前記各鑑定書によって、被告人の知能、意識自体については特段の異常の認められない旨指摘されているところであり、これと被告人の精神分裂病下における精神異常とは必ずしも相容れないものとは言い切れないことを考慮すると右捜査官に対する被告人の供述内容をもって前記責任能力欠缺の認定をくつがえす証左とはならないというべきである。

(谷口 金子 中野)

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